着物というと、約束事が決まっていて流行りなどはそれほどないようにも思えます。
でももちろん、そんなことはありません。
着物にも流行りはあり、成人式の振袖などは、人気色や色柄が毎年変わります。
またもう少し長いスパン、40年程度での流行りもあるといわれています。
さらに長いスパンで考えた場合には、たとえば大正ロマンのように、時代の流行りで新しい洋式が生み出されることもあります。
着物の流行りは、洋服より時間のスパンは長いですが、やはり「ある」といえますね。
振袖の流行り
成人式の振袖は、毎年新作が発表されます。
呉服メーカー各社は「ここぞ」とばかり、今年の流行を提案します。
成人式の振袖は、その年の成人式が終わってすぐ、翌年の新作が発表されます。
着物レンタルなどは、3月までには、新作の着物は予約で埋まってしまうようです。
羽織の流行り
1960年~70年の頃、たとえば小学校や中学校の入学式にお母さんが行く際は、多くのお母さんが着物のうえに黒の絵羽の羽織を着ていました。
当時は着物の上に着るものとして、羽織が流行りだったのです。
式典には黒の絵羽織、お正月にはウールのアンサンブル(着物と羽織が同じ生地で作られている)が定番でした。
ところがその後、羽織はすっかり姿を消してしまいました。
羽織に変わって登場したのは、「道行コート」。
それから次には、道行コートよりも道中着のほうが一般的になってきました。
羽織がふたたび流行している
そして今、ふたたび羽織が流行りになってきています。
以前の羽織ブームの終わりからちょうど40年ほど経っています。
洋服の場合には、流行はもっと短い周期で変化します。
ただし着物の場合は、やはり洋服にくらべると価格が高いため、流行の周期も長いようです。
よく親世代が来ていた着物は古い感じがするけれど、それより古いと、逆に「レトロ」として新しさを感じるといわれます。
これも親世代が20年前と考えれば、ちょうど着物の流行りの周期では谷間になります。
40年くらいして元の姿に戻ることを、このことも意味しているかもしれません。
ただしもちろん、40年前とまったく同じものが流行るわけではありません。
羽織の場合、40年前に流行っていたのは、腰丈までの短いものでした。
ところが今流行っている羽織の丈は、「長羽織」と呼ばれる膝下ほどまであるものです。
着物の流行も他の流行と同様に、元の姿に戻りながらも、新しくなっていくもののようです。
大正ロマン
着物は古来から、大きく変遷してきました。
平安時代に着ていた着物を、今はもう着る人は誰もいません。
このように長いスパンで着物の姿が変わることも、「着物の流行」の一つといえるかもしれません。
大正ロマンも、そういうものの一つとしてとらえられると思います。
大正時代、日本は日露戦争に勝利するなど、国力が高揚した時期でした。
また女性の自立もはじまって、女性雑誌が多く発刊されました。
そのような時代背景の中、ヨーロッパの芸術運動であるアール・ヌーヴォーやアール・デコに影響されて、新しい着物の洋式が生まれました。
それが「大正ロマン」といわれるものです。
大正ロマンは、それまでの着物の着方にとらわれず、新たな着方を模索したものでした。
- 洋風の柄を着物に取り入れる
- 着物にブーツを合わせる
- 洋風の髪飾りをする
などなど、西洋の文化を日本に取り入れ、融合させたものだといわれています。
ただし大正ロマンの新しい洋式は、必ずしも誰かが先導したものではありません。
多くの女性が、自分にとってしっくりとする着物を模索するなかで確立していったものです。
当時の女性は、現代の女性が新作の振袖を喜々として着るように、大正ロマンの着物を着ていたのでしょう。