牛首紬は、石川県の白山市白峰で生産されています。
白峰が、明治の初めまで「牛首村」と呼ばれていたことから、ここで生産される紬を牛首紬と呼ぶのだそうです。
牛首紬の特徴は、「玉繭」を使うことです。
二匹の蚕が作るこの玉繭を使い、織物を作り上げる技術は、母から娘へ、脈々と受け継がれてきたそうです。
玉繭を使うことが特徴の牛首紬
玉繭とは、一つの繭の中に二匹の蚕が入っていて、この二匹によって作られた繭のこと。
だいたい繭全体の2~3%が、この玉繭になるのだそうです。
ただしこの玉繭は、2本の糸がありますから、糸を作るのが難しいとか。
2本の糸が絡まってしまい、きれいな糸が作れないからで、普通はクズ繭として捨てられてしまうそうです。
牛首紬は、この玉繭から糸を引き出す技術を伝承しています。
かなりの熟練が必要で、職人の勘と経験に頼るところが大きいそうです。
しかし2本の糸があることにより、弾力性や伸縮性には優れています。
また糸の途中に絡み合った部分があり、これも牛首紬の風合いの特徴となっています。
牛首紬の製造工程
製糸
まずは玉繭から糸を引き出す、のべびき作業から始まります。
熟練した職人の、勘と経験が頼りの作業です。
撚糸
引き出した糸には、撚りをかけます。
牛首紬は一貫生産していますので、引き出した糸を乾燥させることなく撚りをかけるという、理想の状態になっているそうです。
精錬
独自の方法により、糸に付いている汚れや不純物を取り去ります。
これにより、糸は輝くような白色になります。
糸はたき
これは牛首紬ならではの工程です。
糸をしゃくり、空気を含めることで、元々の蚕の糸質である、波打つうねりを取り戻します。
糸染め
牛首紬は、元々は草木染めを行ってきましたが、現在では退色を防ぐため、化学染料も使用します。
整経
牛首紬を製造するために必要な経糸は、1100~1200本。
これを機織り機に一本一本セットしていきます。
機織り
上下に開いた経糸のあいだに、横糸をつけたヒキビを左右に飛ばしながら織り上げます。