着物の上に着るものは、道中着や雨コート・道行コートなどの和装コートや羽織などいくつか種類があります。
人によってはなかなか着る機会がなく、脱ぎ方などのマナーを知らない人も多いのではないでしょうか?
それぞれの着方とマナー、コート丈や寸法についてまとめているので、いざという時に困らないようにチェックしておきましょう。
羽織と和装コートはどう違う?
羽織と和装コートはどちらも着物の上に着るものですが、その着方やマナーは大きく異なります。
羽織
羽織は洋服に例えると「ジャケット」にあたり、前が開いていて着物とのコーディネートを楽しむもの。
色無地の着物の上に小紋羽織などを着ると、おしゃれな装いになります。
また羽織は、着物の格を変化させる効果もあります。
小紋などの普段着でも、紋付羽織を着ると略礼装になります。
羽織のマナー
羽織は、基本的には室内で着ていてもいいとされます。
ただし略礼装として羽織を着用する場合には、訪問先が親しい人以外の場合は脱いだ方が良いでしょう。
またお茶席などでは、羽織は着ません。
また最近では、羽織は膝下10センチくらいの丈の長羽織が主流となり、おしゃれの要素が強くなっています。
その場合には、室内では脱いだほうが無難なケースもあります。
目上の人がいる場合などは、周りの人に合わせましょう。
羽織の脱ぎ方
室内で脱いだ羽織は、ハンガーなどには吊るしません。
手に持つのがマナーです。
脱ぐ際には、まず肩から羽織を少しずらし、両手で袖口を合わせて脱ぎます。
両袖を合わせてたたみ、さらに袖を折り込んで、くるくると巻くようにたたみます。
たたんだ羽織は、持参した風呂敷などに包んでおくのがスマートです。
和装コート
和装コートは雨などの防水や防寒などを目的として、屋外で着るものです。
ですから訪問先に到着したら、かならず玄関先で脱ぎましょう。
羽織と同様に折りたたみ、風呂敷などに包んでおくのがスマートです。
羽織の種類
夏羽織(なつばおり)
夏羽織は「うすもの」とよばれる生地で単衣仕立てにしたものです。
夏に着るものですから、素材も紗や絽、紋紗、羅、レースなど、涼しげで透けたものを使用します。
初夏の6月から初秋の9月まで着るのがセオリー。
暑い季節にあえてもう一枚着るわけですから、基本的に略礼装か、またおしゃれのために着ます。
袷羽織(あわせばおり)
袷羽織は11月ごろから4月半ばくらいまで、寒い季節に着るものです。
ですから表地に羽裏をつけて、袷仕立てにします。
単衣羽織(ひとえばおり)
単衣羽織は、袷羽織と使われる生地は同じですが、裏を付けずに仕立てます。
ですから着る時期は、4月中旬~5月春と、9月下旬から10月の秋となります。
着用期間が短いため、単衣羽織は着る人も少ないです。
ただしウールの羽織は裏をつけずに単衣仕立てにすることが多く、この場合は袷羽織と同様冬の季節に着ます。
茶羽織(ちゃばおり)
茶羽織はふつうの羽織とはちがい、丈が短く衿丈も細くします。
使う生地が少ないですから価格も安く、「手軽な羽織」「普段着の羽織」という位置づけです。
小紋羽織(こもんばおり)
江戸小紋を柄に使った小紋羽織は、TPOにとらわれずに着られる手軽な羽織で、街着に適しています。
気に入った着尺地から、羽織と帯を作るのが着物通です。
絵羽織(えばおり)
絵羽織は手描き友禅やろうけつ染め、絞り染め、小紋型染めの絵羽風、縫い取り縮緬のぼかし染め、刺繍などなど、さまざまな方法で柄をつけた羽織です。
格式の高い紋様がある絵羽羽織は、略礼装として用いられます。
その他の柄のものは、お正月や会食・観劇など、かしこまったというよりは華やかな場面に着るのがおすすめ。
特に絵羽羽織は、ぜいたくな印象をかもし出します。
色無地羽織(いろむじばおり)
柄のある小紋やお召の着物の場合、色無地の羽織を着ると、スッキリとまとまった印象になり、着物と羽織それぞれが引き立ちます。
改まった雰囲気にもなりますし、おしゃれでもあり、着られる範囲が広いのが特徴です。
紋付黒羽織(もんつきくろばおり)
紋付黒羽織は黒地の羽織に1つ紋または3つ紋をつけたもので、小紋やお召の上に切ると略礼装となります。
ただしこれはあくまでも略礼装で、礼装が必要な場では留袖や色留袖などを着なければなりません。
子供の入学式や卒業式などの学校行事、改まった訪問や法事などに着ていけます。
3つ紋より1つ紋のほうが着用範囲が広く、また幾何模様や波・雲・唐草などの地紋を選ぶと、慶弔両方に着用できます。
羽織の丈と寸法
羽織の丈は、身長の2分の1が基準です。
普通の羽織の場合には身長の2分の1プラス2センチ~4センチ、絵羽羽織はプラス4センチ~6センチが目安です。
裄は、着物より0.5センチ(1分)長くして、袖丈は着物より1センチ~2センチ短く仕立てます。
羽織はおしゃれとして着るものなので、丈は年齢や体型、好み、流行などによって加減します。
和装コートの種類
道行コート
和装コートには防寒用やちりよけ用、おしゃれ用などそれぞれの目的に応じたものがありますが、道行コートはそれらをすべて兼ね備えたコートです。
衿は「道行衿」とよばれる、衿の開きを四角にし、小衿を額縁のように縁取ったもの。
正装や礼装にも着ることができますので、格や雰囲気、調和などを考えて選びましょう。
道中着
道中着はおしゃれを目的としたコート。
礼装用にすでに道行コートを持っている場合には、道中着を求めると、よりおしゃれで通なコーディネートが楽しめます。
衿は道行衿ではなく、裾に行くにしたがって広くなったものが用いられます。
紬や小紋などカジュアルな着物には、道中着がよく似合います。
雨コート
雨コートはその名の通り、着物を雨や汚れから守るもの。
ですから着物をすっぽりと包む、着物の着丈より1~2センチ長い「対丈」で仕立てます。
雨コートによく用いられる素材としては、絹・木綿・架線など。
また紬や唐桟・着尺地など自分が好みの生地に防水加工をほどこせば、雨コートとして使用できます。
夏用のものもあり、その場合は紗などの夏素材が用いられます。
着物をすっぽりと包み込む1部式と、上下にわかれた2部式とがあります。
コート丈と寸法
コート丈
コート丈には、目的と好みによって次のものから選ばれます。
特に背が低い人の場合は、コート丈によって印象が大きくちがいますので、注意して選びましょう。
6分丈
6分丈のコートは「半コート」と呼ばれ、和装コートの中では最も一般的なものです。
着丈の0.6~0.65くらいを目安として仕立てます。
太もも辺りまでの長さですから軽快な印象で、目的や年齢に関係なく幅広く用いられます。
7分丈
背が高く、半コートでは短い印象になってしまう場合や、防寒用としてやや長いものを選びたい場合、またセミフォーマルな装いのためなどの目的で用いられます。
膝くらいの長さですので、半コートより落ち着いた印象です。
8分丈
着丈より1~2センチ長い「長コート」では長すぎると感じたり、防寒用のコートが半コートでは寒い場合、8分丈が用いられます。
膝頭が隠れる長さなので、フォーマルな印象です。
9分丈
使われる目的は、8分丈と同様です。
印象も、8分丈よりさらにフォーマルになります。
対丈
対丈は着丈に1~2センチを足したコート丈で、この丈で仕立てたコートは「長コート」と呼ばれます。
雨コートの場合には、着物の裾が見えてしまうと防水の意味がありませんので、対丈で仕立てます。
長コートは雨コートの他にも、フォーマルな装いや防寒用として用いられます。
フォーマル用として仕立てる場合は、生地などを吟味しなければなりません。
コートの寸法
コートの寸法は、まず袖丈は着物より0.8~1センチマイナスで仕立てます。
裄は逆に0.8~1センチプラスしたものが標準です。