付け下げは略礼装着の一つで、訪問着とよく似た位置づけです。
結婚式に本人や親族として参列する際は着られませんが、それ以外の結婚式やパーティー、観劇、茶席、その他の集まりなどに、既婚・未婚を問わず着ることができます。
付け下げが訪問着と位置づけが似ているのは、元々訪問着の代用品として生まれたから。
着ていく場を訪問着と区別する必要は、あまりありません。
訪問着の代用品として生まれた付け下げ
付け下げが生まれたのは、第二次世界大戦中。
当時は訪問着が「贅沢だ」として着用を禁止されました。
訪問着の特徴は、絵羽模様。
縫い目を越え、全体がつながった柄として描かれる絵羽模様が、「華やかすぎる」となりました。
そこで絵羽模様よりも小ぢんまりとした柄を描き、全体としてやや地味な印象とした付け下げが、訪問着に変わって社交の場で着られるようになったわけです。
地味とはいえ、付け下げは肩や胸、袖などの要所に柄がつけられて、風格は十分です。
付け下げの柄の特徴
訪問着の絵羽模様は白い生地を裁断して仮縫いし、その上に絵を描き、糸をほどいて染め上げます。
このような過程を経ることにより、縫い目を越え、全体がつながった柄を施すことができるわけです。
それに対して付け下げでは、柄を入れるのにこのような方法は採りません。
付け下げの柄は縫い目を越えませんから、反物の段階で模様が描かれます。
付け下げでは、これらの模様がすべて上を向くように仕立てるのが特徴です。
付け下げは、訪問着と同様にさまざまな社交の場で着用することができますが、特に茶席では付け下げが着られることが多いです。
付け下げの控えめな柄が、茶席に向いているからです。
付け下げと訪問着の区別
付け下げも、現在では訪問着の様な華やかな柄が描かれるものも多いです。
また逆に訪問着も、付け下げのような簡素で控えめなものも作られるようになっています。
そのため専門家のあいだでも、訪問着と付け下げの区別がつきにくくなっているのが実情です。
ただし訪問着と付け下げには、はっきりとした違いがあります。
訪問着は縫い目を越えて柄を描きますから、お店で売られる際には仕立てられた状態になっています。
それに対して付け下げは反物の段階で柄をつけますので、お店でも反物の状態で売られます。
また付け下げは、おしゃれ着の中でもカジュアル感のある着物です。
なので紋は、基本的につける必要がありません。
もし付ける場合でも、一つだけに留めるようにするのがおすすめです。