飯田紬の歴史と特徴について

飯田紬は長野県・飯田地方で生産される絹織物です。
長野県全域で生産される紬織物「信州紬」の一種となり、経産省より伝統工芸品として指定を受けました。

飯田紬の歴史

飯田地方では古くから手引き糸を各地に出荷していました。
ただし紬織物が商品として出荷されるようになったのは、信州紬の各地の中では比較的遅く、幕末の頃です。

飯田地方では糸として商品にならない屑繭から糸をひき出し、自家用として紬を織っていました。
これが飯田紬の発祥です。

文化13年(1816年)、飯田地方・喬木村富田の筒井サキノが玉繭から手引した糸を使い、薄絹として「富田絹」として商品化。
これが京都で紅梅に染められ、人気を得たのがはじまりです。

大正時代には力織り機も導入され、さまざまな製品が作られました。
でも現在は、素朴な手織りの紬織物と白生地のみの生産です。

飯田紬の特徴

飯田紬の特徴は、やわらかな味わいの格子柄です。
「飯田格子」という呼び名ができるほどの人気を集めました。

現代の飯田紬は、柄より織り味を重視する方向です。
手紡ぎの節糸などを活かし、ぼかしのある柄も多いです。

飯田紬の染色法は、天竜川流域に自生するさまざまな植物を染料とし、鉄や木炭・ミョウバンなどの媒染剤を使用したもの。
染料となる植物は、柿やりんご・栗・よもぎ・梅・しそ・ひのき・紅葉・ナス・さつまいもなどです。